願行寺

東部町祢津:百瀬義彦住職
〔連載第6回〕

 木造菩薩立像
 浄土宗のこの寺は元和七年(一六二一)、上田城下町整備の為、寺屋敷替があり、海野町裏(現在の地)に再建された。寺は上田藩主松平氏の菩提寺で、松平忠済(ただまさ) 公、忠固(ただかた)公及び松平家子孫の墓がある。
 寺の本堂には本尊として阿弥陀三尊がまつられているが、一昨年、それまで観音堂に安置されていた一体の菩薩立像が文化庁の調査で鎌倉時代の初期につくられたことが分かった。
 ヒノキの寄木造りで像の高さは五十二センチ。目には玉眼がはめ込まれ膝の上に施された金が今でもはっきりと残っている。また髪型は天平や白鳥彫刻を思わせる。腰を少しひねり右足を一歩手前に踏み出している。当時の世の中の苦しみを自らが救おうとする動きが感じられる。全体のバランスから考えおそらく阿弥陀如来の左脇に置かれていたものだろう。この像は市内に現存する鎌倉時代に造られた仏像の中では最も古いものに分類される。
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