常光寺

真田町傍陽:飯島俊勝住職(上田市、海禅寺住職)
〔連載第58回〕

 真田町傍陽曲尾の集落の一角にたたずむ常光寺。創建は天喜五年(一〇七五年)、今から九四三年と歴史は古い。

 大熊備前守常光が亡き母・梅野の菩提のため邸宅内に法輪坊を移築、一寺を建立したのが同寺のはじまり。寺は弘化四年三月に焼失。その後、嘉永初年に本堂摩利支天堂だけが再建された。

 大熊備前守常光は佐渡の出身。天文十三年四月、川中島四度目の合戦で武田勢に加わり水内群箱山村の鎮守に陣を張った。この時の合戦は甲越物別れとなり、上杉は越後に武田は甲州にと引いた。常光は足軽五十騎を従えて当初に砦を築き、村上の残党に備え住居した。永録十二年に歿した。

 同寺近所のお年寄りによると、「この寺は宮様がお尋ねになったこともあり、大変由緒あると聞いています。また、寺の門前にある二体のお地蔵さまもいわれのあるものです。」と話していた。残念なことに現在の寺は当時の面影はとどめていない。

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