前松寺
上田市上室賀:宮入紀雄住職
〔連載第41回〕

 上田市上室賀の、のどかな山里にたたずむ前松寺は天文元年(1532)に室賀下総守盛清によって創建された。開山は宗清天和尚。
 本寺は瑞松寺だったが明治五年に廃仏稀釈によって同寺が廃寺となったため明治十三年碩水寺に定められた。
 重厚な山門の奥に本堂があるが、本堂玄関の左右の木鼻に阿吽(あうん)の龍の彫刻がある。これは地元の佐藤清五郎の作。
山門にも同氏が彫刻している。
 創基以来、現在まで約四百六十年余という長い歴史ある同寺は、この間、二回もの火災に遭っている。その都度再建されているが、特に文化二年の時は再建までに十年の歳月がかかっている。本堂、庫裡の上塗りなど実質的に完成したのは実に七十年後の明治八年だった。
 江戸中期には室賀氏の末裔で室賀正朋氏が家老職に就いた時、同寺を参詣したいと寺を訪れた。 この時、毘沙門堂にあった同家の墓を松前寺の裏に移したという。
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