中禅寺 上田市前山：坂部　弘雄　住職

〔2006年4月22日掲載〕 　上田市塩田平の独鈷山のふところにある「中禅寺」は今から千余年前、この地に空海上人が訪れた際、村人が日照りで飢餓に苦しんでいる姿を見て、草庵を結んで雨乞いの祈祷をしたのが最初とされる。過去、数度の火災に遭い多くの記録を消失してしまった。享保19年、中興開山祐精法印により、現本堂を建立した。 重要文化財「薬師堂」 　茅葺きの宝形造屋根、美しく素朴なたたずまいの「薬師堂」は鎌倉初期の中部日本最古の木造建築物。昭和１１年に国から重要文化財の指定を受けた。 　堂内には本尊「薬師如来座像」が安置されている。この像は平安時代末から鎌倉時代初期の定朝様式をよく伝え、丸い肩、伸びやかな胸と腹、結跏趺座（けっかふざ）して右手施無畏印、掌に薬壷をのせる左手与願印など全てが自然で、均整の取れた優雅な像。 ◇　　　　　　　　　　◇　　　　　　　　　　◇ 　薬師如来は正面から観るとりりしく男性的なお顔立ちだが、お堂の北側の扉を細く開け、そこから一条の光がこの像に当たると、横顔が優しい女性のお顔になります。「この像の横顔をじっと観ていると悲しいこと、辛いことなど悩みごとをふっと忘れさせてくれます」と坂部住職。

住職の好きなことば 「拈華微笑」（ねんげみしょう） 　この言葉は釈迦が仏様の法をさとしている時、花一輪をつまんでみせたところ若い僧がにっこり微笑んだ。釈迦はこの僧に法を授けたという。

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