前山寺

上田市前山:河合 弘史 住職
〔2006年2月9日掲載〕

 上田市前山の「前山寺」は弘仁年間(812)空海上人が護摩修行の霊場として開創したと伝えられている。当初、古義真言宗として法相、三論両宗を兼ねていたが、元弘年間(1331)讃岐国善通寺より長秀上人が来止し、正法院を現在の地に移し、前山寺を開山したと伝えられている。
 後には塩田城の鬼門に位置するため祈祷寺として武将の信仰も厚かった。貞享年間(1684〜)鶏足寺を離末し、京都の智積院末となり真義真言宗信州常法談林所として教学の殿堂であった。かつては四十数ヶ所の末寺を持ち、歴史ある寺として知られている。

国重要文化財「三重塔」
 塔の建立年代は不明だが様式上、室町時代の初期と推定されている。塔は三間三重で、高さ十九.五m、屋根は柿葺(こけらふき)。「未完成の完成の塔」といわれ、二、三重の柱に長押仕口がありながら窓も扉もなく、廻廊、勾欄もない。ただ長い胴貫が四方に突き出してうまく変化と調和を持たせている。
住職のことば

「かけた情は水に流せ 受けた恩は石に刻め」
日常の当たり前のことでも『ありがたい』という気持ちが大切。
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